幻のレトロPC『JR-300』とは?2024年に起きた実機展示とエミュレータ開発の奇跡を追う

2026/2/22 RetroPC NEWS編集部

1980年代、ナショナルの「JRシリーズ」は、他社とは一線を画す設計思想で独自の地位を築いていました。なかでも長年「幻」とされてきたのがJR-300です。

2024年、この伝説の機種を巡ってSNSでは大きな激震が走りました。エミュレータによる再現や、半ば都市伝説と化していた実機のお披露目など、40年の時を経てJR-300に光があたったのです。

当時、リアルタイムでX(旧Twitter)などの盛り上がりを追いかけていたファンも多いかと思いますが、ここであらためて、これら一連の驚くべき経緯を整理して記録に残すことには、大きな歴史的意義があると感じています。2024年に起きた「奇跡」を振り返ってみましょう。


National JRシリーズ

1980年代前半、ナショナル(松下電器、現Panasonic)が展開した「JRシリーズ」は、主流になりこそはしなかったものの人気がありました。当時の松下電器には日本全国を網羅する圧倒的な販売網があり、各地の電器店で展示・販売されました。

  • JR-100: 1981年発売の入門機。54,800円と低価格ながら、6800系CPUを搭載。テキスト表示主体で「消しゴム」のようなキーが特徴でした。
  • JR-200: 1982年発売。カラー表示と3重和音のサウンドに対応。RAMも32KBへ増強され、ゲームも楽しめる実力機として普及しました。定価は79,800円でした。
  • JR-800: 1983年発売のB5サイズ・ハンドヘルドPC。8行表示の液晶や本格的なBASICと関数機能を備え、モバイル利用を意識した設計でした。定価128,000円でした。

JR-100の広告 (工学社 I/O 1982/03) とJR-200の広告(工学社I/O 1983/11) 編集部加工

そして JR-300 の登場?

1983年頃、JR-200は、JR-200の上位モデルとして開発・発表されましたが、実態はホビー向けというより、ビジネスや教育現場をターゲットにした高機能マシンでした。一部の店舗ではカタログが配られ展示スペースが確保されていたにも関わらず、実際に販売されることはなかったため、長らく幻と言われてきたのです。

高校時代、静岡のNationalのショールームでずっと「近日登場」で展示場所まで確保されながら、結局展示されることがなかった幻のパソコン。( asayanさん )

では、そんな幻のJR-300の仕様について説明します。

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JR-300のカタログ (画像提供asayanさん)

JR-300の主な特徴

  • 驚異のデュアルCPU構成 メインCPUにZ80A、サブCPU(グラフィック・I/O制御用)にMN1800(6800互換)を搭載。JR-100/200の資産を継承しつつ、当時のビジネス標準だったCP/M等のOS利用も視野に入れた設計でした。
  • 大幅に強化されたグラフィック 最大640×200ドットの解像度、8色のカラー表示が可能。JR-200までの「文字単位のグラフィック(セミグラフィック)」から、本格的なビットマップグラフィックへと進化しました。
  • セパレートタイプのデザイン 本体とキーボードが分離した、当時の高級パソコンらしいスタイル。オプションで5.25インチのフロッピーディスクドライブも接続可能でした。
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JR-300のスペック (画像提供asayanさん)

なぜ「幻」なのか

発表はされたものの、同時期に松下電器自身も参画した「MSX」規格の台頭や、ビジネス市場における「PC-8801(NEC)」の独走により、学校教育などの特定のルートで少数が流通するにとどまり、中古市場でも見かけない希少なモデルとなっています。

そのような背景の中、2024年に2つの衝撃が走ります。

2024年、同時に起こった2つの奇跡

1. JR-300エミュレータの開発に成功!!

1つ目は、x.comのPocketGriffonさんが、JR-300のデモテープを入手し、実機を全く触ることなく&触ることもできず、テープ内のプログラムとカタログ情報を頼りにエミュレータの開発に成功。デモを動かしたのです。下記ブログにその経緯がまとめられています。
JR-300エミュレータとその上で動くデモプログラムはMI68で実演されました。

2. JR-300の実機がMI68にて展示される!!

2つ目は、JR-300の実機をレトロゲームショップBEEPが買いとり、2024年のMI68というレトロコンピュータのイベントで実機を展示することになったのです。

JR300_1 幻のレトロPC『JR-300』とは?2024年に起きた実機展示とエミュレータ開発の奇跡を追う

JR300本体(上段)、JR300カタログ(下段左)、JR300エミュレータ(下段中)、JR300ミニチュア(下段右)

3. MI68に登場したJR-300のミニチュア

コンピュータのミニチュア製作を中心に活動されているcatsinさんも、JR-300のミニチュアを完成させてイベントを盛り上げます。

JR-300のミニチュア(画像提供: catsinさん)

JR-300はMSX CF-3000に

残念ながらJR-300は幻となりましたが、その技術が継承されたのでしょうか、似通った筐体のCF-3000が1983年後半ごろMSXとして登場することになりました。

CF3000 幻のレトロPC『JR-300』とは?2024年に起きた実機展示とエミュレータ開発の奇跡を追う

National MSX CF-3000


MI68における JR-300の動画

MI68における JR-300 に関する様子は動画にまとめられています。こちらをお楽しみください。

都市伝説級⁉️幻のパソコンNational JR-300【MI68レポート 】第14回 マイコン・インフィニット☆PRO-68K (MyCOM INFINITE 14th☆PRO-68K)