ワークステーションにCバス?オムロン「LUNA」に見る1980年代末の興味深い市場戦略
2026/2/6 RetroPC NEWS編集部
オムロン(当時の立石電機)が1988年に投入したLUNAシリーズは、個性的かつ野心的なワークステーションでした。
LUNAとはどのようなマシンか
LUNAという名は、当時市場を席巻していた米Sun Microsystems社のSunに対抗する(太陽に対する月)という意味を込めて名付けられたと言われています。
OMRON HORONIC WORKSTATION LUNA
ディスクレスモデルながら価格は55万円〜と非常に低価格 (ASCIIの広告より、編集部加工)
オムロンのLUNAが持つ最大の特徴は、本格的なUNIXワークステーションでありながら、当時国内で圧倒的なシェアを誇っていたNEC PC-9801用の拡張スロット、通称「Cバス」を搭載していた点にあります。
Cバスを2スロット搭載するLUNA-II (スーパーASCIIより編集部加工)
Cバス NE2000ボードを装着するLUNA (画像:Kenji Aoyamaさん)
Cバスシリアルボード(2段目)を装着するLUNA (画像:Kenji Aoyamaさん)
当時のUNIXマシンは周辺機器が高価なうえに選択肢が少ないという課題を抱えていました。一方で、普及が進んでいたPC-9801向けには、安価な通信ボードや計測ボード、多彩なインターフェースカードが市場に溢れていました。
LUNAはこのCバスを採用することで、それら豊富で安価なPC-9801用資産をそのまま活用することを可能にしました。本来、これらのボードをUNIX(UniOS)上で動作させるには専用のデバイスドライバが必要となりますが、オムロンが主要なボード向けのドライバをサポートしていました。
LUNAのスペック表にはPC-9801互換スロットと表記 (スーパーASCIIより編集部加工)
全てのLUNAシリーズにPC-9801互換スロットを装備。表上段右端(スーパーASCIIより編集部加工)
初代LUNAはCPUにMotorolaのMC68030を搭載。OSにはBSDベースの「UniOS-B」やSystem Vベースの「UniOS-U」を選択できるマルチOS環境を提供していました。
後継機のLUNA-88Kでは、RISCプロセッサのMC88100を最大4基搭載し、当時としては驚異的な100MIPS以上の性能を謳いました。これはカーネギーメロン大学のMach OSを搭載しており、当時の最先端技術の結晶でした。現代から見てもMotorola 88000を搭載したマシンは極めて稀有だと言えます。
OMRON LUNA88K2(画像:Kenji Aoyamaさん)
OMRON LUNA88Kの CPUボード (画像:Kenji Aoyamaさん)
キーボードには光るLUNAのロゴがある (画像:Kenji Aoyamaさん)
Motrola MC88000を搭載するLUNA88K (スーパーASCIIより編集部加工)
オムロンはワークステーション分野に力を入れていた (スーパーASCIIより編集部加工)
しかし、1990年代に入ると、以下の要因で苦境に立たされます。
- PCの性能向上: Windows 3.1や95の登場により、高価なUNIXワークステーションの役割が安価なPCに奪われ始めました。
- Σプロジェクトの失敗: 多額の予算を投じたΣプロジェクトが市場の期待に応えられず、プロジェクト準拠マシンの需要が急減しました。
- 独自路線の限界: 非常に高機能なLUNA-88Kは一般のビジネス需要には結びつかなかったことから、1990年代後半にはオムロンはワークステーション事業からの撤退を余儀なくされました。
LUNA88KでOpenBSDを動かすファンも
商業的にはあまり成功したとは言えないマシンでしたが、今なおコアなファン(NetBSD/OpenBSDなど)に愛される名機です。
LUNAについては、残存する資料が極めて少ない状況でして、RetroPC NEWS編集部で調べ切れたのはここまでとなりました。もし情報をお持ちの方はお知らせくださいね!















