プログラマー完全専用電卓「HP-16C」。それは手に乗るコンピュータ・デバッグ・ツールだ。

2026/1/7 RetroPC NEWS編集部

HP-16Cは、HP(ヒューレット・パッカード)が1982年に発売した、プログラマーやソフトウェアエンジニアに特化した伝説的な電卓です。いわゆる「Voyager(ボイジャー)シリーズ」の一つで、その独特な横型のデザインと堅牢さ、そして唯一無二の機能から、製造終了後も中古市場で非常に高い人気を誇っています。

レトロPCでの開発に便利な上、このように資産価値も高いので見つけたら手に入れておいても良さそうです(笑)。RetroPC NEWSでは簡単な使い方を説明します。実機がなくてもエミュレータでお試しいただけます。

16進数→10進変換

例:16進数の “1C” を10進数変換して”28″という答えを知りたい

  • [g](青色)を押して”g”インジケータを点灯させます。
  • [BSP](CLx)を押してクリアします。
  • [HEX]を押します。画面に「h」と表示されればOKです。
  • [1]を押し[C]を押して、”1C”と入力します。
    • A〜Fのアルファベットを入力する場合は、上段のキー([A]〜[F])をそのまま押します。
  • [DEC]キーを押します
  • “28 d” と表示されます。10進数で”28″、dの表示は10進数を表します。
HP16C1 プログラマー完全専用電卓「HP-16C」。それは手に乗るコンピュータ・デバッグ・ツールだ。

10進数→16進変換

例:10進数の “238” を16進数変換して”EE”という答えを知りたい

  • [g](青色)を押して"g"インジケータを点灯させます。
  • [BSP](CLx)を押してクリアします。
  • [DEC]を押します。画面に「d」と表示されればOKです。
  • “238”と入力します。
  • [HEX]キーを押します。
  • “EE h” と表示されます。16進数で”EE”、hの表示は16進数を表します。
HP16C2 プログラマー完全専用電卓「HP-16C」。それは手に乗るコンピュータ・デバッグ・ツールだ。

足し算 (四則演算)

普通の電卓とは異なりRPN記法のためコツが必要です。

例:16進数の”3F”に16進数の”8″を足して”47″を知りたい。

  • [g](青色)を押して"g"インジケータを点灯させます。
  • [BSP](CLx)を押してクリアします。
  • [HEX]キーを押します。
  • [3]を押し[F]を押して、”3F”と入力します。
    • A〜Fのアルファベットを入力する場合は、上段のキー([A][F])をそのまま押します。
  • [ENTER]を押して記憶させます。
  • [8]を押して加算する数を入れます。
  • [+]を押すと”47″と表示されます。
HP16C3 プログラマー完全専用電卓「HP-16C」。それは手に乗るコンピュータ・デバッグ・ツールだ。

シフト演算

HP16Cの最大の特徴は、「Word Size(ビット幅)」を自由に変更できることと、「2の補数(負の数)」を直感的に扱えることです。ビット演算の基本サンプルを3つ紹介します。

Word Size(ビット数)の設定

まず、計算の枠組みを8ビット(1バイト)に設定してみましょう。

  • [g](青色)を押して"g"インジケータを点灯させます。
  • [BSP](CLx)を押してクリアします。
  • [DEC]を押して[8] を押します。
  • [f](黄色) を押し [STO] (WSIZE)を押します。
    • これで「8ビットモード」になります。

サンプル:左シフト(2倍にする)

例:”5″をビットシフトして2倍にしたい。

  • [g](青色)を押して"g"インジケータを点灯させます。
  • [BSP](CLx)を押してクリアします。
  • [DEC]を押して[5]を押します。
  • [BIN]を押して2進数にします。
  • “101 b”と表示されます。
  • [f](黄色)を押して”f”インジケータを点灯させた後、[A](SL)を押します。
  • “1010b”と表示されます。
  • [DEC]を押します。
  • “10d”と表示されます。
    • [f][A](SL) を押すごとに、数値が2倍(20 → 40…)になっていくのがわかります。

自己診断モード

もしHP16Cを手に入れたら自己診断モードを試してみてください。

  • 電源を切ります。
  • [ON]を押したまま[x]を押します
  • [ON]を先に離してから[x]も離します。

回路が正常なら約15 秒後 (それまでは running の文字が点滅します)に”−8,8.8,8,8,8,8,8,8.8. “とインジケータが全て点灯します。Error 9 の表示だったり、何も表示しなかったり変な表示は故障です。

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HP16C5 プログラマー完全専用電卓「HP-16C」。それは手に乗るコンピュータ・デバッグ・ツールだ。

エミュレータとマニュアル

HP-16Cは現代でもアクセス容易な情報があります。


HP-16Cとは

一般的な電卓が10進法の計算を主とするのに対し、HP-16Cはコンピュータサイエンスの計算を直接行えるように設計されています。

  • 多進法への対応: 2進数(BIN)、8進数(OCT)、10進数(DEC)、16進数(HEX)をボタン一つで切り替え可能です。
  • ビット演算: AND, OR, XOR, NOTといった論理演算はもちろん、ビットシフトやローテート(回転)も実行できます。
  • ワードサイズの変更: レジスタのビット数を1ビットから64ビットまで任意に設定できます。これは、特定のハードウェア(8ビットマイコンや64ビットCPUなど)を想定したデバッグに非常に便利でした。

数値表現の柔軟性

コンピュータ特有の数値の扱いをシミュレートできます。

  • 補数表示: 1の補数、2の補数、および符号なし(Unsigned)の切り替えが可能です。
  • フラグ確認: キャリーフラグ(C)やオーバーフローフラグ(G)の状態をディスプレイに表示するインジケータがあります。

RPN(逆ポーランド記法)の採用

HPの電卓の代名詞ともいえるRPN方式を採用しています。

  • 「2 + 3」を 2 [ENTER] 3 + と入力する方式で、スタックを利用して計算を進めます。
  • 複雑な数式も括弧(カッコ)を使わずに、スタックの積み上げだけで効率よく計算できるため、エンジニアから絶大な支持を得ました。

高度なプログラミング機能

単なる計算機ではなく、プログラムを組むことが可能です。

  • 最大203ステップ、または101個までのレジスタをメモリとして利用できます。
  • ループ、条件分岐(GTO、GSBなど)を備えており、繰り返し計算を自動化できます。

Voyagerシリーズ特有のハードウェア品質

  • 横型デザイン: ポケットに入るサイズでありながら、横長のデザインは安定感があり、片手での操作性に優れています。
  • 極上のキータッチ: HPのこの時代のボタンは「カチッ」とした明確なクリック感があり、誤入力を防ぐ信頼性の高い設計になっています。
  • 超低消費電力: 電池(LR44x3)を使いますが数年は交換が不要です。
電源LR44 × 3
サイズ約 128 × 79 × 15 mm
重量約 113 g

なぜ今でも人気があるのか?

現在ではPCの電卓アプリやスマホで代用が可能ですが、「物理的なボタンで、ビット操作を直感的に行える専用デバイス」としての完成度が極めて高いため、ビンテージ愛好家やベテランエンジニアの間では「一生モノの道具」として扱われています。