公式に縦置き対応していたレトロPCまとめ|NEC・シャープ・エプソン・Apple
2026/1/18 RetroPC NEWS編集部
かつてパーソナルコンピュータは、本体の上に重いディスプレイを載せる「横置き」スタイルが一般的でした。しかし、日本の住宅事情やデスク環境の変化に合わせ、メーカー各社は限られたスペースを有効活用するための「縦置き」という新たな選択肢を提示し始めます。1980年代のレトロPC黄金期、どのようにして「縦置き文化」が生まれ、進化していったのか。各名機の工夫とこだわりを振り返ります。
NEC PC-8801mkII
パソコンを縦に置くというスタイルを一般的にしたのは、1983年に発売されたNEC PC-8801mkIIでした。

縦置きのPC-8801mkII (画像出典:カタログ)
それ以前のパソコンApple IIやPC-8801などは本体の上にディスプレイを載せる「横置き」が前提のデザインでしたが、なぜPC-8801mkIIから縦置きができるようになったのか、その経緯と理由は主に「住宅事情」と「利便性の追求」にあります。
日本の狭いデスク事情への対応
当時のパソコンは本体が大きく、さらにディスプレイを載せるとかなりの奥行きと幅を占有しました。日本の家庭の勉強机やオフィスデスクでは、キーボードを置くスペースすら確保するのが難しい状況でした。本体を横に避けて「縦置き」にすることで、机の上の有効スペースを広げ、書類を広げたりキーボードを使いやすくしたりする工夫が必要とされました。
キーボードの分離
初期のパソコンは本体とキーボードが一体型でしたが、PC-8801シリーズなどの上位機種ではキーボードが分離式になりました。キーボードが自由に動かせるようになったことで、必ずしも「本体が正面にある必要」がなくなりました。本体をデスクの端に縦に追いやり、手元を広く使うスタイルが可能になったのです。
ハードウェアの工夫
単に「立てる」だけでなく、メーカー側も縦置きを前提とした設計を盛り込みました。
- 接続端子の二重化: PC-8801mkIIでは、縦置きにしても横置きにしてもキーボードのケーブルが邪魔にならないよう、本体の前面と側面の2箇所にキーボード端子が用意されていました。
- 専用のゴム足: 側面にもゴム足(接地用の突起)が付いており、安定して設置できるようになっていました。
- 縦でも横でも読みやすいように、本体ロゴを傾けています
フロッピーディスクの採用
PC-8801mkIIは、5インチフロッピーディスクドライブ(FDD)を内蔵したことが大きな特徴でした。
- カセットテープでの読み込み(横置きが必須なことが多い)からフロッピーに移行したことで、ドライブの向きが変わっても動作に支障が出にくくなり、縦置きへのハードルが下がりました。
NEC PC-8801mkIISR
SRでも「縦置き」が継承された背景には、いくつかの重要な工夫がありました。mkIIとSRでは「左右どちらを底面にするか」が逆になっています。mkII: 向かって右側が上。SR: 向かって左側が上(右側面が底面)。これは、FDDのイジェクトレバーの操作性を考慮したためと言われています。SRのドライブはレバーが左側にあったため、右側を下にすることでレバーが「上(あるいは操作しやすい位置)」に来るよう工夫されていました。

NEC PC-8801mkIISR (画像出典:工学社I/O 1985/3号)
mkIIの時は「そのまま立てる」イメージが強かったですが、SR以降は設置をより安定させるための縦置き用脚が装備され、より「オフィシャルな設置スタイル」として定着しました。
縦置き文化の終焉とその後
この「縦置き継承」は、その後のTR以降では、本体の小型化や内部設計の変更(放熱やスロットの配置など)により、側面キーボード端子が廃止され、徐々に「横置き専用」へと戻っていきました。
HITACHI S1 model 30/40
HITACHI S1モデル30/40 (画像出典:工学社I/O 1985/3号)
縦置きスタンドがあったかどうかは定かではありませんが、広告には縦置きの写真が掲載されていました。
SHARP X1G
SHARP X1GはX1シリーズの中でも珍しく「公式に縦置きを考慮した設計」が取り入れられたモデルです。X1Gの本体側面(正面から見て左側)には、縦置きした際に安定させるための回転式の足が装備されています。体の左側面にあるネジを少し緩め、収納されている足を引き出して固定します。これにより、専用スタンドを別途用意しなくても自立できるようになっています。当時のカタログや広告でも、この縦置きスタイルがひとつの売りとして紹介されていました。
SHARP X1G (画像出典:工学社I/O 1985/3号)
PC-9801UV11
このモデルは、A4ファイルサイズというコンパクトさを活かすため、縦置き対応設計がなされていました。本体の側面(横置きした際の右側面)に、あらかじめ縦置き用ゴム足が付いています。
また、PC-8801mkIIと同様に、本体前面の「PC-9801UV11」というロゴが斜め(または縦・横どちらからも読める方向)にデザインされており、どちらの向きに置いても違和感がないよう配慮されています。
NEC PC-9801UV11 (画像出典:カタログ)
IBM PC/AT
IBM PC/AT(1984年発売、Model 5170)の正面にある「IBM」バッジ(エンブレム)は、回転させることが可能な設計になっています。 この機能は、本体をデスクトップ設置(横置き)からタワー設置(縦置き)に変更した際に、ロゴの向きを正しい方向に合わせるために実装されました。
しかも、フロントパネルにあるバッジ(IBMロゴ)を90度時計回りに回転させることができ、垂直(縦置き)位置でも正しい向きにできました。バッジは前面パネルの裏側からスプリング式で固定されており、押して回転させます。これは、PC/ATがそれまでのPC(5150)やXT(5160)と異なり、床に立てて置く「タワー型」の設置も想定されていたため、このようなデザインが採用されたようです。なお、80年代のコンピュータにおいて、こうした詳細なディテールがIBMのブランド力を際立たせていました。
IBM PC/AT (画像出典:wikipedia MBlairMartin)
NEC PC-9801US/UR/UF
PC-9801US/UR/UFを縦置きにする場合、側面のプレートを回転させるようにして広げます。これにより、接地面が横に広がり、細身なUS本体を安定して自立させることができました。

NEC PC-9801US(画像出典:カタログ)
NEC PC-9801UR/UF(画像出典:カタログ)
EPSON PC-286V/386Vシリーズ
PC-286Vは、当時の本家NEC PC-9801VXシリーズよりも一回り小さく省スペースを最大の武器にしていました。当時のNEC PC-9801VXが横幅420mm、HDD内蔵のVX4では横幅470mmあったのに対し、PC-286Vは横幅380mmでした。筐体の側面に縦置き用の足が備わっていました。

EPSON PC-286V (画像出典:工学社I/O 1988/7号)
Macintosh IIci/cx
本体右側(電源スイッチやファンがない側)を下にして立てます。足のゴム(バンパー)の位置を付け替えることで、安定して立てられるように設計されています。
AppleIIci (画像出典:カタログ)
まとめ
縦置きが広告やカタログで謳われているものを集めました。PC-98XLのように縦置きスタンドがオプションで発売されているものもあったり、X68000のように縦置きだけど横置きもできるマシンもあります。RetroPC NEWS編集部で調べ切れたのはここまでとなりました。もし詳しい情報をご存知でしたらお寄せ下さい。よろしくお願いします!








